南部鉄器の技術承継

~職人と交流できる出張職場体験!~というフレーズ、どんなことを想像しますか?

私は、てっきり鋳物作り体験ができるのかと考え参加しましたが、丸の内のオフィスビル内でそんなことが出来る訳もなく、内容としては製造現場の人材(職人)を募集するために南部鉄器の魅力を伝えるためのイベントでした。

南部鉄器は、岩手県内にルーツが二つあり、岩手県奥州市と盛岡市で造られる物をいいます。 平安後期に起源を持つ水沢南部鉄器と、藩政時代から盛岡藩の庇護を受けて発達した盛岡南部鉄器。 2つの地域で異なる歴史を刻んできた南部鉄器ですが、奥州市のものは平安時代からなので900年以上続くと言われます。今回は、奥州市側の「水沢鋳物」のイベントでした。最も歴史ある企業で創業1852年と業歴170年です。84年の会社はまだまだヒヨッコとおっしゃっていました。

昨今、日本の伝統工芸品は海外でも人気があり、南部鉄器も同様で売上は順調みたいです。会社によって様々ですが国内:海外=50:50の割合の説明がありました。

一方、経営者の皆さまは、職人さんの高齢化によって、早晩、作れなくなるというところまで来ているという危機感をお持ちです。現状、平均年齢が50〜60代。キューポラ、土入れなど工程ごとに専門性が必要であり、現に鉄瓶の”高級品用の取手”を、作れる人がいなくなったそうです。全てのパーツが手作りなので技術は多岐にわたり、技術習得も容易ではないとのこと。もっと南部鉄器、南部鋳物の認知度を上げる必要があると感じているようで、「これまでもパン屋やコーヒー屋などとコラボしたり、奥州市でフィールドワークを開催したりしています」と主催者の方からもご説明をいただきました。

改めて伺っていて感じたのは、求人ではなく、職人を探しているという事実。何が違うのか?マニュアルがある訳ではなく、必ず○年で技術が修得できるというものでもありません。職業としての技術ではそんなことは無いと思いました。内容的に一子相伝とまでは言えませんが、感覚的にはそれに近いと思いました。ですから普通の技術者募集ともいかない人材募集の難しさを感じました。

経営者の皆さまは900年続いた技術を絶やす訳にはいかないという思いでいらっしゃいます。何ができるのかを含めて、考えたいと思います。