ユキロン提供企業のすごさ

コロナ禍における雪ケ谷化学工業の経営の対応力②

「中小企業の強み」と検索すると、”意思決定が速い”、”変化対応力”など沢山出てきますが、雪ケ谷化学工業はそれを体感できる企業です。

  同社にはY-CUBE®というは製品があります。これは、左写真のスポンジを水処理設備などの排水処理に入れておくだけで、掛かる電気料金のコストダウンや、余剰汚泥処理費用などの軽減が期待できまるというものです。(同社webサイト引用 水処理用 微生物固定化PVA担体 排水処理/下水処理 y-cube │ 化粧品、産業用、医療用、スポーツ用スポンジの製造 雪ヶ谷化学工業株式会社 (yukilon.co.jp)

 

 坂本社長曰く、「Y-CUBEは排水処理用微生物担体としてちょっと高いため初期投資はかかりますが、耐久性が高く3年前後で投資回収が図れる費用対効果の高い製品です」と説明しています。

 国内は、他社従来品によって代理店から排水処理層メンテ会社まで仕組みが出来あがっていたので参入余地が乏しかった。そこで海外に目を向け、中国案件を少々こなしたと言います。中国では上水の整備からまさに下水処理の整備に入ったばかりで、これから10年間で星の数ほどの新規設備導入が計画されていることが分かり、坂本社長は「これならば市場の1%取るだけでも成功する」と算段を付けました。早速、中国で2.5万㎡の土地を確保し工場建設を計画し、コロナ禍始まりの数か月前に政府にフィージビリティ―スタディまで提出していましたが、具体化するフェーズに入り、中国公共案件は1件当たりのボリュームが大きく、現状の設備では1件受注すると作るのに1年かかる。また、環境もコロナ禍&米中関係悪化を懸念してコロナ1年目の2020年7月に計画中止を決断したとのことです。でも社長のすごいところは、工場建設計画をそのままにすることはなく、化粧品のパフの製造ラインに切り替えた。これも狙いがあって、中国の人が“美“に力を入れはじめ、化粧品用パフのマーケットとしては今後とも相当な規模になること、またパフは大きな設備投資が必要でないため、仮にY-CUBEに切り替える時期だと判断できる場合は切り替えが可能となること、そしてコロナ禍の到来で輸出入の制限がある中で切り替えたことが奏功したとのことでした(当時)。

 ここまでの話を聞いて、私は中小企業の経営者のすごさをまざまざと感じました。これだけの判断を1人でする。この度胸やダイナミックさ、判断力や決断力に加え、嗅覚の鋭さとそして緻密さがすごいと。なぜ、中小企業のオーナーはこのような判断が出来るのか。まさにオーナーだからなのかなと感じました。覚悟が違うし、誰かが責任を負ってくれるわけでもなければ、責任から逃れることも出来ない。そこに従業員はついていくという感覚なのだからだろうと思います。

 坂本社長はこの決断を次のように話しています。「私はマイナス要素に過敏に反応するタイプで、①世界中金融じゃぶじゃぶで今後の姿が想像できなかった、②コロナ禍で海外へ行き来できないので不正発生のリスクが大きくなった、③コロナ禍関係なくても「評判の良い屋台のラーメン屋が繁華街の駅前に大きな店を出す」みたいな計画だったので頭では成功を想像しても内心は元々怖かった」とのことです。そして、このようなことも言っています。「また良い機会とその時に適した社員がいれば計画復活します」とも。次回は坂本社長が新たに力を注いでいることを記したいと思います。

 

因みに、坂本社長が一足飛びにこうなったわけではありません。これまでのことを知りたい方は以下の記事もお勧めします。

世界シェア70%の中小企業 "宝物"は"失敗品"の中にある | 働き方改革研究所 (teamspirit.co.jp)