コロナ禍における雪ケ谷工業の経営と対応力
昨年11月のことですが、東京都大田区にある雪ヶ谷化学工業の代表取締役社長坂本昇さんの講演を聞いてきたときの話です。
同社の「ユキロン」と呼ばれるオリジナルスポンジは、きめ細やかな肌触りが特長であり、世界中で愛用されています。そのシェア何と70%。あっ、この入り方だとどのようにそこまで拡大できたのかを知りたくなりますが、本日はそこではなく、この1年間のコロナ禍における同社の対応の一つについて、触れたいと思います。
在宅勤務は、中小企業には難しいと聞きますが、同社においてはそんなことはなく、Microsoft TEAMSとZoomを活用し、早期にテレワーク体制を構築しました。無理してでも進めた一番の理由は、「大企業顧客は必ずテレワークを進める。早めに慣れて顧客に便利な存在になろう」という考えに基づいたもの。結果、その通りになったのは勿論ですが、副産物として従来は会えない人と会えるようになったり、社内研修もし易くなったとのことでした。
同社は2019年12月にSDGs活動を開始していますが、コロナ禍でもリモートによるワークショップを計4回開催し、SDGsな4製品をリリースするに至っています。筆者はリモートでは新製品開発を進め難いイメージを持っていますが、同社はそれを短期間で実現しました。製品開発力を強みに掲げる同社ですが、この環境下を利用して更に成長するのではないかと感じました。
それにしてもリモートを積極的に活用できる中小企業と出来ない中小企業の差はどこにあるのでしょうか?坂本社長が、営業支援システムに米セールスフォース・ドットコムの「Salesforce」を導入するなど、IT化を進めたからかもしれませんし、中途採用による外部人材を積極的に活用しているからかもしれません。でも、今回に関して言えば中国、米国にネットワークを持ち、その状況をタイムリーに、そして的確に把握しようと努力した結果かもしれません。いずれにしてもコロナによる環境変化の先を想像し、柔軟に対応しているのは間違いありません。改めて、こういう中小企業があるのだと心強く感じました。
最後に同社がコロナ禍で対応したのは、これだけではありません。実は、ここに触れなかったことの方がすごいなと感じましたが、そちらは別の機会に譲ることにしました。今後とも注目していきたいと思います。